一般社団法人大阪発明協会
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令和5年度大阪優秀発明表彰
受賞決定
昭和51年より、大阪発明協会は、大阪府において優れた発明を完成し、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残した人々の偉大な功績を顕彰するため、「大阪優秀発明大賞」を設立し、大阪府の産業社会の貢献した企業および発明者に対して表彰を行ってまいりました。現在は「大阪優秀発明大賞」と、中堅企業・中小企業を対象にした「大阪チャレンジ発明賞」の両賞を、「大阪優秀発明表彰」として表彰しています。
そして今年度は厳正なる審査の結果、大阪優秀発明大賞2件、大阪チャレンジ発明賞1件を決定いたしました。表彰式は、令和6年1月30日(火)大阪大学中之島センターにて挙行される予定です。
令和5年度大阪優秀発明大賞
(敬称略)
「熱硬化型導電性ボンディングフィルムCBF800」
(特許第6320660号)
山 本 祥 久(タツタ電線株式会社)
梅 村 滋 和(タツタ電線株式会社)
(背景)
スマートフォン等のカメラモジュールを実装したフレキシブルプリント配線板に金属製補強板を貼り付けるため、熱硬化性樹脂組成物中に金属粒子を分散した導電性ボンディングフィルム(Conductive Bonding Film、以下CBFと略す)が使用されている。金属製補強板をプリント配線板に貼り付ける際は、プリント配線板におけるカバーレイに開口部を形成して金メッキ/銅箔からなるグランド回路を露出させ、加熱プレスにより開口部にCBFを充填・硬化し、当該回路と金属製補強板とを物理的/電気的に接続させることで、プリント配線板を機械的に補強するとともに金属製補強板に電磁波シールド機能を付与させ、カメラモジュールにEMC対策を施すことができる。しかしながら、近年はプリント配線板の小型化や回路パターンの微細化に伴い、開口部の直径も小さくなっており、従来のCBFでは金属製補強板と回路との導電性や接着性を維持することが難しくなっていた。
(本発明の特徴)
開口部の直径が小さくなることで従来のCBFの導電性や接着性が悪くなる理由として、①開口部に充填されたCBFの樹脂に潜在応力が蓄積され、その後の部品実装工程においてリフロー加熱した際に潜在応力が開放され、樹脂と共にCBFに分散された金属粒子が流動し、金属粒子とグランド回路表面との接点が減少することで導電性が低下する、②開口部の直径が小さくなると開口部に充填される金属粒子が少なくなるため①の減少が起き易くなる、と推測した。 そこで本発明者らは、加熱プレス時に樹脂に蓄積された潜在応力を、所定の柔軟性を有する樹脂粒子が吸収することで緩和することを検討した。鋭意検討した結果、従来のCBFの基本的な構成(熱硬化性樹脂、硬化剤、金属粒子)に加えて、タイプAデュロメータ硬さが55以上90以下のウレタン樹脂粒子を配合することで、従来のCBFでは困難であった0.5mm程度の小計の開口部であっても、従来品に比べて約20%の導電性を向上させることを見出した。これにより、微細化された回路パターンに対応したカメラモジュールを実装したフレキシブルプリント配線板を製造することが可能となった。
(実績)
2017年より出荷を開始し、ハイスペックモデルのスマートフォンに採用されている(年間売上高約5~20億円)。
令和5年度大阪優秀発明大賞
(敬称略)
「予めファスニングテープを止めた使い捨ておむつのサイドフラップ 折り畳みシステム」
(特許第5604743号)
藤 田 幸 彦(株式会社瑞光)
(背景)
使い捨ておむつには一般的に『テープタイプ』と『パンツタイプ』があります。『テープタイプ』は、何度もファスニングテープを付け剥がしすることができるので、被着用者の体型に応じてサイズやフィット性を細かく調整できるメリットがあります。『パンツタイプ』は、伸縮素材によって胴回りや脚周りにフィットしやすく、履きやすく履かせやすいメリットがあります。これら両タイプのメリットを活かし、ファスニングテープを着脱して幅広いサイズ調整や被着用者へのフィット性を高めることができて、履きやすく履かせやすい特徴を有した新しい『リクローザブルタイプ』のおむつについて、弊社は量産可能な機械の開発をすすめて参りました。
(課題)
これまでに、物品を保持する保持部材と、保持部材に隣接した揺動アームにより、物品の端部を持ち上げて折り曲げ、三つ折り状に折り畳む機構を提案していました。
従来技術では物品全体の大部分をコシのある吸収体からなる生理用ナプキンを対象とし、吸収体の端部を持ち上げて折り曲げることにより物品をコンパクトに折り畳むことが出来ました。しかし、 おむつの構成要素には胴回りを覆うための胴回り部材(サイドフラップ)があり、サイドフラップのようなコシの弱い部分を持ち上げて正確に折り畳むことは困難でした。
(本発明の特徴)
主パッド,サイドパッドによりオムツ本体,サイドフラップをそれぞれ吸着保持するとともに、折り機構により一対のサイドパッドを主パッドに対し回転駆動させるため、サイドフラップを確実に折り畳むことができ、所定箇所に正確に止着することが可能となりました。
また、従来のおむつ同様に、『リクローザブルタイプ』のおむつでも、1分間におよそ700個の生産速度を実現することができました。
(実用化)
本発明を具備した『リクローザブルタイプ』おむつ製造ラインは、現在までに日本国内・海外に合計4ラインの納入実績があります。
令和5年度大阪チャレンジ発明賞
(敬称略)
「かなめボード」
(特許第6821082号)
東 史 (あるくん商会合同会社)
(背景)
障がい者や高齢者の使用対象になるトレーニング器具は少ない。特に、骨盤の歪みは体のあちこちの張りや痛みの原因と、運動効果が得にくくなる原因でもある。放置することで、関連して歪みが進行する脊柱は、負荷のかかる部分で圧迫骨折や狭窄症などに至るケースが多い。しかし、骨盤周辺を動かすことは難しく、マッサージや矯正で緊張や痛みをとる程度で、体幹強化はされていない。
(本発明の特徴)
上記の骨盤周辺の筋肉を動かす難しさを解決するために、座板の下に揺動可能な支持部材と他に揺動を可能にする操作板を付け介助者のサポートで体幹トレーニングを可能にすることを考えた。
使用者の不安を少なく運動効果を上げること、介助者の負担を少なくサポートしやすくすることと、筋肉の性質上続ける期間と頻度が必要になるため、継続しやすさを重視し、強度を保ちつつ軽量で使いやすいことに配慮した。
本発明は、以下にあげる5つの効果が考えられる。
⑴ 介助者がつくる座板の角度で、対象者の骨盤周辺の筋肉のストレッチと筋力トレーニングすることができ、骨盤のゆがみを矯正し、体幹をバランスよく強化することができる。
⑵ 操作板があることで(テコの原理で)、介助者の少ない力でトレーニングがサポートできる。
⑶ 操作板があることで、介助者が対象者の腰やお尻に触れずにサポートができて、介助者と対象者が他人や異性であってもトレーニングをしやすくしている。
⑷ 筋膜や筋肉の硬化の進んだ対象者が筋を傷めないように座板が傾く以外は本人の意志で上半身に逃げる余地を与えて、対象者に合わせた段階的な進め方のトレーニングを可能にする。
⑸ 前に手擦りのある場所や両肘を置ける机などと組み合わせて上半身を支えて行うえば、ストレッチ効果を狙ったトレーニングや、体幹が不安定な対象者のトレーニングも可能にする。
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