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一般社団法人大阪発明協会
TEL.
06-6479-1910
〒530-0005 大阪市北区中之島4-3-53
平成29年度大阪優秀発明表彰
受賞決定
昭和51年より、大阪発明協会は、大阪府において優れた発明を完成し、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残した人々の偉大な功績を顕彰するため、「大阪優秀発明大賞」を設立し、大阪府の産業社会の貢献した企業および発明者に対して表彰を行ってまいりました。現在は「大阪優秀発明大賞」部門と、中堅企業・中小企業を対象にした「大阪チャレンジ発明賞」部門による、「大阪優秀発明表彰」として表彰を行っています。
そして今年度は厳正なる審査の結果、大阪優秀発明大賞2件、大阪チャレンジ発明賞1件を決定いたしました。表彰式は、平成30年1月29日(月)大阪大学中之島センターにて挙行されました。
平成29年度大阪優秀発明大賞
(敬称略)
「エネファームtypeS集電材電着塗装」
(特許第5572146号)
井 上 修 一(大阪ガス株式会社)
野 中 英 正(元 大阪ガス株式会社)
齋 藤 禎(大阪ガス株式会社)
宅 和 雄 也(大阪ガス株式会社)
依 田 将 和(大阪ガス株式会社)
西 村 茂 文(株式会社シミズ)
塚 本 然 造(株式会社シミズ)
(背景と課題)
エネファームtypeSはSOFC(固体酸化物形燃料電池)を用いた家庭用コージェネレーションシステムであり、省エネルギー性に非常に優れたシステムである。大阪ガスは2012年から販売しているが、一層の普及促進のために、更なる発電効率向上による省エネ性・光熱費メリット向上や、コストダウンを実現するフルモデルチェンジ機の開発に着手した。しかし、耐久性の確保と発電効率の向上やコストダウンはトレードオフの関係にあるため、開発過程でその両立に関する課題が顕在化した。集電材が耐久性と発電効率に大きな影響を与える(図1,2)ため、高耐久かつ低電気抵抗のコーティング技術の開発に取り組んだ。集電材は形状が複雑であり、均一な膜厚でむらなくコーティングすることが困難だった。そこで、電着塗装技術(図3)に着目し、集電材への適用検討を行った。
(本発明の特徴)
発明者らは塗膜中のセラミックス成分を増加させようと試みた。電着塗料粒子よりセラミックスの微粒子はサイズが大きく、沈降しやすく電着塗料樹脂成分であるアクリル樹脂と共析しづらかったが、アクリル樹脂とセラミックス微粒子との親和性と泳動性とのバランスを最適化することで解決した。開発した電着塗料では、高い共析率と均一性が得られセラミック成分の析出量が確保できたとともに、セラミック粒子が電荷を持つことで、沈降性の改善および再分散性の向上など分散性も向上し、実用レベルの安定性に到達した。 集電材に電着塗装後、脱バインダー・焼結を経てセラミックス膜を得るが、開発品では、エッジ部を含めて均一な膜厚でセラミックス膜が形成できた(図4)。 なお、セラミックス成分についてもトレードオフとなる導電性や熱安定性に加え、焼結性、熱膨張率の適合性という要素を考慮する必要があるが、これらの要素をクリアできる材料開発や脱バインダー・焼結工程の最適化も実施し、セラミックス成分とステンレス成分が反応したち密な膜の形成に成功し、耐久性向上に寄与した。 本発明により、世界最高の発電効率52%と10年の耐久性確保の両立が実現でき、2016年4月にフルモデルチェンジしたエネファームtypeSを発売した。
「VIANA-LSP特許およびVIANA-NPF特許群」
(特許第3933183号 他39特許)
前 川 肇(パナソニック株式会社)
郷 原 邦 男(パナソニック株式会社)
(背景と課題)
2002-2003年当時、ハードディスクレコーダや、白物家電を宅外から制御したいニーズが高まってきた。しかしながら、ケータイからブロードバンドルータを超えてネット対応家電にアクセスするのは“NAT(Network Address Translation)越え”と呼ばれる問題が存在し、ユーザが介在せず、無設定で実現することは非常に困難であった。これらの問題を解決するため、NATの宅内側にいる端末同士が、1)自分たちだけで共有可能な伝送路を必要に応じて作成し、2)端末同士が必要とする情報の交換を自在に行え, 3)これらの伝送路の作成に人間による設定がいらないことという課題を解決する目標を掲げ、複数の特許で問題を解決してきた。このような状況において、1台のNAT越えをまず実現し(LSP-(Lightweight Signaling Protocol技術)、その後2004年からはNAT越えをさらに発展させ、P2P(pear to pear)型のコンテンツ配信のニーズに答えられるように2台のNAT越え(NPF-Network Path Finder技術)を可能にした。
(着眼点、アプローチ)
ブロードバンドルータにはNATが実装されている。NATの特性として、宅内側から送信したUDPのパケットに対しては、“しばらくの間”、送信に対する応答のパケットを期待してアドレス変換テーブルが作成される。これは一般に数分で消滅するが、これを維持するためにUDPのパケットを定期的に送信し、戻りパケットがいつでも宅内のネット家電機器に到達するようにした(LSP)。しかし、このような単純な仕組みではセキュリティを高く保てないため、セキュリティを向上させるように予測が難しいワンタイムキーの生成を行うようにも構成している。その後、2つのNAT間で通信を疎通させるように、アドレス変換テーブルの生成のされ方を予想し、P2Pの伝送路を確立するように発展させた(NPF)。
例えば、特許3933183号は、シンメトリックNATと呼ばれる形式のNATを挟んでP2Pの伝送路を作るためのNATトラバーサルを実現するものである。具体的には双方のNATのNATポートの生成順を予測しつつ、サーバと2つのクライアントが情報を共有しながら最終的にP2Pの伝送路のための経路を作成する技術である。
(効果)
本発明により、DiMORA: PC・携帯向けEPG配信・DIGA遠隔予約サービス、MeMORA: 番組「後メタ」データを用いたシーン検索機能、TV Anywhere/Media Access: 宅外放送・録画番組転送がVIERA,DIGA向けにサービスを実施しており、VIARA,DIGAのネット対応による付加価値向上に貢献している。
主な関連特許
3933183号 通信システム、情報処理装置、サーバ、および通信方法
3933182号 通信システム、情報処理装置、サーバ、および通信方法
4345751号 通信システム、情報処理装置、サーバ、および通信方法
3646731号 情報処理装置および受信装置
4507904号 通信システム、情報処理装置、サーバ装置、及び情報処理方法
4706282号 情報処理システム、情報処理装置、及び情報処理方法
平成29年度大阪チャレンジ発明賞
(敬称略)
「アーク放電活用避雷器非破壊測定法」
(特許第6082882号)
古 賀 佳 康(音羽電機工業株式会社)
佐 藤 智 之(東北電力株式会社)
廣 岡 征 紀(音羽電機工業株式会社)
米 田 靖 章(音羽電機工業株式会社)
(本発明の概要)
日本国内における高圧配電線路には,落雷に起因する雷サージから機器を保護する目的で多数の避雷器が設置されている。避雷器は酸化亜鉛素子と直列に接続したギャップを容器に収めて密封構造としたものであり,ギャップによって電気的に絶縁されている。避雷器は過大な雷サージなどによって劣化して,ギャップの放電電圧や酸化亜鉛素子の微小電流領域端子間電圧が低下することが知られているが,酸化亜鉛素子の劣化を診断する有効な手段はなかった。 劣化した避雷器では機器を保護することができず,電力会社における配電線事故(停電)や工場など高圧需要家における停電による操業停止の原因となる。このため,避雷器内部の酸化亜鉛素子の劣化を診断する技術開発が求められていた。
(本発明の効果)
本発明は避雷器を破壊することなく内部の酸化亜鉛素子の劣化を診断するもので,この技術を利用して開発した耐雷機材劣化診断装置を図1に示す。 耐雷機材劣化診断装置は,図2に示す方法で避雷器内部のギャップがアーク放電するまで直流電圧を上昇させ,アーク放電後,微小電流を短時間通電させる。このとき,避雷器端子間に短時間残留する電圧(図3参照)を測定して酸化亜鉛素子の劣化を診断する。また,ギャップ放電時の電圧を測定してギャップの劣化を診断する。 避雷器端子間電圧は酸化亜鉛素子端子間電圧とギャップに微小電流を通電させたときに端子間に発生するアーク電圧とが加算されたものである。耐雷機材劣化診断装置は,測定した避雷器端子間電圧からギャップ端子間電圧を適切に減算して酸化亜鉛素子端子間電圧を求め,これによって酸化亜鉛素子の劣化を診断する。
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