平成17年度大阪優秀発明大賞


受 賞 決 定


 当事業は、昭和51年より大阪府において、優れた発明を完成し、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残した人々の偉大な功績を顕彰するため、毎年実施しております「大阪優秀発明大賞」の受賞者が過日決定されました。
 本年度の応募件数は8件で、厳正なる審査の結果、大賞1件、発明賞4件、功績賞1件を決定し、平成18年1月18日(水)大阪第一ホテルにて表彰式が挙行されました。
 

   


平成17年度大阪優秀発明大賞

 
 「画像合成方法及び画像合成装置」 (特許第2970440号)
    吾 妻 健 夫 (松下電器産業株式会社)
    森 村    淳 (松下電器産業株式会社)

<本発明の概要>

(背景と課題)

本発明は、コントラストの高い被写体を異なる電荷蓄積時間で概ね同時に撮像し、1枚の画像として合成することにより、飽和や黒つぶれのない画像を得る画像合成方法に関するものである。従来の構成では、電荷蓄積時間の異なる画像に対しあらかじめ設定した固定のゲイン比によりゲイン合わせを行い、信号レベルに応じた重みを乗じて加算することで画像を合成していた。しかし、特にγ補正手段を伴う撮像系によって得られた画像を合成する際には、低輝度入力に対するゲインを抑制する場合が多いため正確なゲイン合わせができず、輝度が連続的に変化する領域を撮像する際に合成された画像中で輝度の逆転や不連続が発生していた。

(本発明の特徴)

本発明で電荷蓄積時間の異なる2枚の画像を合成する場合、入力レベルの一定の範囲内で、頻度が最大のレベルが同一になるようにゲイン比を求めるか、各部分ごとのゲイン比の平均値または中央値、もしくは各部分ごとに求めたゲイン比の中央値、または、複数のレベルにおけるゲイン比を内挿または外挿してゲイン比を算出する。次に乗算手段によって両画像のゲインを合わせる。これにより、露光条件の異なる画像を合成する際に、画像信号のレベルに基づいた正確なゲイン合わせが可能となる。
 次に、長い電荷蓄積時間の画像には各部分の信号レベルに応じて図1の「レベル重みL」の重み値を、短い電荷蓄積時間の画像には図1の「レベル重みH」の重み値をそれぞれ乗じて加算する。これにより、明るい部分には短い電荷蓄積時間の画像を、暗い部分には長い電荷蓄積時間の画像を、中間の明るさの部分には信号レベルに応じ連続的に変化する重み値を乗じ加算した画像を用いる。これにより、合成された画像中で輝度の逆転や不連続の発生を抑止できる。



        



平成17年度大阪優秀発明賞

 
「左右非対称継手を有するハット型鋼矢板」 (特許第2964933号)
    鹿野   裕  (住友金属工業株式会社)
    増田 敏聡  (住友金属工業株式会社)
    阿部 幸夫  (住友金属工業株式会社)
    古市 潤二  (住友金属工業株式会社)
    中里 卓三  (住友金属工業株式会社)
    野中 健児  (住友金属工業株式会社)


 本発明は、オフィスビルや住宅の地下室、都市の共同溝等地下構造体の耐力壁や土留め壁、さらに港湾河川等の護岸壁として用いられ、さらに近接施工に適したハット型鋼矢板に関するものである。本発明のハット型鋼矢板は、油圧式圧入機を用いて打設するため、打設時に騒音や振動が発生することがなく環境にやさしい製品であり、香港、英国に輸出され施工された実績がある。また熱間圧延による左右非対称継手を有するハット型鋼矢板として世界で初めて実用化された製品であり、国際特許を11カ国で取得している


 「連続鋳造機鋳型内湯面レベル制御装置」 (特許第3591422号)
    北田   宏  (住友金属工業株式会社)
    岡   正彦  (住友金属工業株式会社)

連続鋳造機では、鋳型内溶鋼表面の位置(湯面レベル)を一定値に保つために鋳型への溶鋼注入流量を調節できる「鋳型内湯面レベル制御」が常に行われる。本制御には湯面レベルの変動幅を±5mm以内に保つ精密さが必要で、大きな変動は製品品質に悪影響を与えるだけでなく操業の安定性を損なう。そこで本発明ではバルジングの大きさが変動して鋳型内溶鋼収支が周期的に乱されるために生じる湯面レベル変動「非定常バルジング性変動」を抑制する湯面レベル制御装置の実現を図り、連続鋳造機の鋳造速度向上および製品品質安定化に寄与した。

  「環境にやさしいマンホール用吸込水槽」 (特許第2928988号)
    米村 省一  (株式会社クボタ)
    内海 義人  (株式会社クボタ
    村口 武士  (株式会社クボタ
    品末 太郎  (株式会社クボタ

    宮内   直  (株式会社クボタ
    松田 政昭  (株式会社クボタ
    山本 宜史  (株式会社クボタ
    土居 正人  (株式会社クボタ
    高橋 益人  (株式会社クボタ
    田中 晋介  (株式会社クボタ

 本発明は、下水道の下水圧送用ポンプに用いる吸込水槽に関するもので、2つの予旋回槽同士を相互に導水路で連絡し、導水路を通してそれぞれの予旋回槽に流入する水流の方向がそれぞれの予旋回槽に対応するポンプ羽根車の回転方向に一致するようにそれぞれの予旋回槽に連通することにより、水槽内壁に固着する下水に含まれる固形物(スカム)を大幅に低減し、排水の不具合、離脱スカムによる下流域の汚染、悪臭の発生などを低減し、良質な住環境を提供するとともに、維持管理コストを低減している。


  ・「電子機器用高機能電線」 (特許第3279206号)
    早味   宏  (住友電気工業株式会社)

 カラー液晶パネルは年々大画面化しているため、バックライト用の冷陰極管を高輝度化する必要があり、供給電流の高周波化、高電圧化が進んでおり、高圧リード線の絶縁体からの漏れ電流の低減が必須である。一方液晶パネルの薄型化に伴い、配線スペースは年々狭くなっており、リード線の柔軟性の向上と細径化が必要である。本発明は従来高圧リード線として使用されていたシリコーンゴム電線に代わるものとして、シングルサイト型メタロセン触媒で重合された、柔軟性と強度を併せ持ちかつ比誘電率も低い超低密度ポリエチレンに着目し、酸化亜鉛を併用することでハロゲン系難燃剤の必要添加量を大幅に減量することでポリエチレンの難燃化を図り、電子線照射による超低密度ポリエチレンの架橋技術を組み合わせ、シリコーンゴムと同等の耐熱性を達成した電線に関するものである。この電線は、シリコーンゴムと同等の柔軟性でありながらカットスルー強度(耐エッジ強度)はシリコーンゴムの5倍という特徴が市場で認められている。


平成17年度大阪優秀発明功績賞

    中 村 邦 夫 (松下電器産業株式会社 代表取締役社長)