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令和2年度大阪優秀発明表彰 受賞決定


  •  昭和51年より、大阪発明協会は、大阪府において優れた発明を完成し、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残した人々の偉大な功績を顕彰するため、「大阪優秀発明大賞」を設立し、大阪府の産業社会の貢献した企業および発明者に対して表彰を行ってまいりました。現在は「大阪優秀発明大賞」部門と、中堅企業・中小企業を対象にした「大阪チャレンジ発明賞」部門による、「大阪優秀発明表彰」として表彰を行っています。
     そして今年度は厳正なる審査の結果、大阪優秀発明大賞1件、大阪発明奨励賞3件、大阪チャレンジ発明賞1件を決定いたしました。表彰式は、令和3年1月21日(木)大阪大学中之島センターにて挙行される予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令されたことを鑑み、誠に残念ながら中止することになりました。


  • 令和2年度大阪優秀発明大賞
    (敬称略)

    「放射性セシウム分離濃縮方法及び放射性セシウム分離濃縮装置」
    (特許第6754341号)

     釜 田 陽 介(株式会社クボタ)
     阿 部 清 一(杵築技術士事務所)
     上 林 史 朗(クボタ環境サービス株式会社)
     佐 藤   淳(株式会社クボタ)
     吉 岡 洋 仁(クボタ環境サービス株式会社)
     寶 正 史 樹(株式会社クボタ)
     西 村 和 基(株式会社クボタ)

    • (背景)
       東日本大震災に伴う福島第一原発の事故により、放射性物質が広範囲に拡散し、東日本の一部地域の環境を汚染した。その後の住宅地や農地の除染作業により、除去された放射能汚染廃棄物が1,300万m3以上発生し、順次、中間貯蔵施設への搬出が行われている。これらの廃棄物は、30年以内に県外最終処分を完了させることが法律で規定されているため、県外最終処分の負荷を低減させるための減容化技術が求められている。
      (課題)
       これまで、放射能汚染廃棄物の処理技術としては、原子力発電所等から発生する濃縮廃液、固形廃棄物を溶融ガラス化、セメント固化する技術はあったが、いずれも放射性物質を単に固化体中に閉じ込めて安定化する技術であるため減容化の効果は低く、また、全ての核種を全量固化体中に閉じ込めることは困難で、溶融処理過程で揮発した核種を別途捕集しなければならないという問題があった。
      (本発明の特徴)
       本発明の特徴は、放射能汚染廃棄物に塩素系助剤を添加して溶融することで、廃棄物に含まれる放射性セシウムを、低沸点の塩化セシウムに化学変化させて高効率に揮散(気化)分離し、溶融飛灰中に少量濃縮して90%以上の減容化が図れる点にある。塩素系薬剤の添加量が多いほど放射性セシウムの揮散率(分離効率)は高く、添加量により揮散率を制御することができる。一方、揮散しない鉱物からなる溶融スラグは、放射性セシウム濃度が処理前の10分の1以下となるため、コンクリート骨材、セメント材料、道路舗装材などの産業用資源として有効利用することができる。塩素系薬剤としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化第二鉄などの無機系薬剤だけでなく、廃塩化ビニルなどリサイクルが困難なプラスチック廃棄物も適用することができる。
      (実用化)
       本発明は、福島県双葉町の仮設灰処理第一施設(75 t/日×2系列)で採用されており、現在稼働中である。




      • 令和2年度大阪発明奨励賞
        (敬称略)

         
        「昇降式ホーム柵」
        (特許第6085452号)

         井 上 正 文(西日本旅客鉄道株式会社)
         内 田 秀 明(株式会社JR西日本テクシア)
         平 野 雅 紀(西日本旅客鉄道株式会社)
         佐 藤   信(株式会社JR西日本テクシア)
         井 上 修 吾(株式会社JR西日本テクシア)
         潮 田 圭 志(株式会社JR西日本テクシア)
         今 井 達二己(日本信号株式会社)

        • (背景と課題)
           近年、鉄道の利用者が駅ホームから線路に転落すること、さらに、転落直後に駅に入線した列車と利用者が接触することを防止するため、駅ホームの線路側の縁部に沿ってホーム安全柵の設置が進んできた。従来から駅ホーム全域にわたりロープ、長尺のバー又はロッドを昇降させる昇降式のほか、腰高の壁面又は全面壁状の壁面を有し、列車乗降扉位置のみ開閉する防護壁式の安全柵等があった。
           従来の昇降式安全柵は、ホームに沿ってロープ等を架渡しかつ支持するため、複数のポスト(支柱)を備え、さらに列車乗降時に乗降客の支障とならないようロープ等を支持するポスト高さは3m以上の高さを必要とした。このため、乗務員や駅係員による駅ホームの安全等確認にあたり、視野が制限され見通しの悪い環境となっていた。一方、防護壁式安全柵は、一度設置すると開閉位置の変更は微修正しかできす、扉の数や位置の異なる多種の車両が乗入れする線区への設置は不向きであった。
          (本発明の特徴)
           本件発明は、鉄道駅ホームの線路側の縁部に沿って配置されるロープとそのロープを昇降支持するホーム安全柵用ポストで構成される。列車入線時等は、下降している複数ロープ間の間隔が広がることで利用者を安全に保護し、乗降時は複数ロープ間の間隔が縮まった状態で利用者の頭上に移動するため乗降の障害にならない。さらに、安全柵用ポスト内に収納用空間を形成し、ロープ支持用昇降部を設け、外観上不必要な部材露出部等をなくしたことで、乗務員や駅係員による駅ホーム上の視認性を向上させることで駅ホーム上の安全に寄与し、デザイン的にも良好となっている。
          また、ロープ昇降の制御単位を列車の一車両長の長さとし、それらの制御単位で独立して安全柵の開閉制御を可能とし、編成長さの異なる列車にも必要な部分のみの開閉を行う制御としている。これらのことから、扉枚数や扉位置、列車編成長の異なる多種の車両が乗り入れする線区においても柔軟に設置できるようになった。



          • 「舶用SCRシステム」
            (特許第5511865号)

             田 中 博 仲(日立造船株式会社)
              

            • (背景と課題)
               本発明は、舶用ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を除去するために使用される選択触媒還元脱硝装置(SCR:Selective Catalytic Reduction)に関する。
              従来からあったSCRシステムが陸上用であるのに対して、本発明は大型船舶用である。この用途の違いは、排ガスの排出源が同じディーゼルエンジンであっても、エンジンの種類が異なることで排気温度が低くなり触媒が不活性(陸上用:4ストロークエンジンで排気温度350℃前後/大型船舶用:2ストロークエンジンで250度前後)になることや、燃料油の種類が異なることで硫黄分が多いため還元剤(アンモニア)と反応して排気温度の低下に伴って硫安を析出し触媒の脱硝効率の低下を招くこと(陸上用:A重油または軽油/大型船舶用:C重油)が課題となった。 上記の課題を解決するために、排ガス温度の高いエンジンと過給機の間に触媒容器を配置することを検討したが、大型ディーゼルエンジンの排気出口直後に設置するには、高温高圧の排気脈動とエンジンからの機械振動に触媒容器内の触媒が揺さぶられても触媒のズレや脱落が生じないようにすることと、スペースに余裕がない船舶の機関室に設置するために触媒容器のコンパクト化が新たな大きな課題となった。
              (本発明の特徴)
               従来の触媒のセラミック担体に替えて、本発明では触媒を担持させたセラミックシートの平板と波板を交互に積み重ねて金属製の組立式収納枠体内に装填し、一つの触媒ユニットを形成している。金属製枠体を採用することにより、従来のセラミック担体と比較して、飛躍的に強度が上がったので、触媒容器内の多数の触媒ユニット群を断面方向および排ガス流れ方向とも強固にボルト止め固定することが可能になった。また、個々の触媒ユニットの流れ方向は入出口に連結し得る嵌め込みガイドを形成し一体化を可能にした。さらには.従来のセラミック担体の断面形状がほぼ正方形のみだったのに対して、矩形だけでなく、扇形や台形、三角形とすることを可能にした。これにより円形断面の触媒容器内で断面が円形に近い多角形に触媒ユニット群を形成できるようになったので、触媒容器内の触媒の充填効率を上げて、触媒容器の小径化が可能となった。
               本発明を採用した舶用SCRシステムは国内外で約100基が運用中で、海上における厳しい環境規制をクリアできる最も有効な手段として注目を集めている。



              • 「緊急車両用電子サイレンアンプ」
                (特許第6007894号)

                 田 中 宏 樹(株式会社パトライト)
                  

                • (背景と課題)
                   消防車や救急車、パトカー等の緊急自動車用のサイレン音をスピーカから出力するためのサイレン音出力装置については、一定の制約が課されており、例えば、消防車のサイレン音であれば、320Hz~780Hzの間を遷移するような制限音に定められている。なお、閑静な住宅地や消防署周辺の地域等では、住民に迷惑がかからないようにするため、制限音にこれと重ねられた音とが心地よい和音となるようなサイレン音を形成し提供するようなケースもある。一方、近年、自動車の窓ガラスの遮音性能は益々向上しており、緊急走行車両の交差点進入時や渋滞道路通過時において、車中のドライバーがサイレン音に気づきにくいという問題が生じる怖れがある。車中のドライバーなどに気づかれやすいサイレン音を提供できれば、緊急自動車等のドライバーの走行安全の向上、歩行者などの周辺者の安全向上、ひいては発生している緊急事態への対処をより速やかに行えることより社会インフラ基盤の向上につながる。
                  (本発明の特徴)
                   本件発明は、基本サイレン音(制限音)に「特定の周波数特性の付加サイレン音」を付加し、「高警告モードサイレン音」を生成している。これは、基本サイレン音と付加サイレン音の倍音(周波数がn倍の音)が生成されること、差音(周波数の差の音)が生成される特性を利用した。この結果、環境騒音に紛れにくくより聞こえやすい2~4kHzのサイレン音、車中ドライバーに届きやすく、遠くまで届きやすい600Hz以下のサイレン音を生成できた。その他、交差点進入時や渋滞道路での追い越し通過時など、注意喚起力向上の為、生成サイレン音が協和音とならない(心地よい音とならない)構成や、サイレン音の周波数変化区間を基本サイレン音から変化させることにより緊迫感を高める構成なども施している。