平成26年度大阪優秀発明表彰


受 賞 決 定


 昭和51年より、大阪発明協会は、大阪府において、優れた発明を完成し、わが国の科学技術の発展に大きな足跡を残した人々の偉大な功績を顕彰するため、「大阪優秀発明大賞」を設立し、大阪府の産業社会の貢献した企業および発明者に対して表彰を行ってまいりました。現在は「大阪優秀発明大賞」部門と、中堅企業・中小企業を対象にした「大阪チャレンジ発明賞」部門において、「大阪優秀発明表彰」として表彰を行っています。
 そして今年度は厳正なる審査の結果、大阪優秀発明大賞1件、大阪チャレンジ発明賞1件、大阪発明奨励賞3件を決定し、平成27年1月28日(水)大阪大学中之島センターにて表彰式が挙行されました。
 
   


平成26年度大阪優秀発明大賞 (敬称略)

 
 「鉄道車両用歯車装置の低騒音化技術開発」
  (特許第4952362号)
    近 藤 祥 一(新日鐵住金株式会社)
    南    秀 樹(新日鐵住金株式会社)

<本発明の概要>

(背景と課題)
 近年、省エネルギーおよびCO2削減の推進により、鉄道の利用増加とともに、利便性改善に伴う鉄道車両の高速化や運用距離の延長等の対策が講じられ、車内の快適性向上や周辺環境の騒音低減要求が高まっている。
 車両走行速度の上昇と共に、動力を伝達する歯車装置の騒音も増加するため、騒音の原因となる要因を分析した結果、従来の鉄道車両では問題となっていなかった歯車の噛み合い音が騒音の主原因である事が判明した。一般的には、歯車の噛み合い音を低減させるためには、噛み合い率を向上させるために、歯幅やネジレ角を増加させるが、鉄道車両には車両限界規定があり大幅な寸法変更は不可能で、軸受性能の観点からネジレ角の増加も見込めないため、現状寸法形状の内での騒音低減を図る技術が必要であった。

本発明の特徴
 本発明は、歯車の一歯毎の噛み合い運動に注目し、騒音の原因となる歯の撓みにより発生する噛み合いの振動起振力が、可能な限り小さくなる様に以下の特徴を持つ新しい歯面修整形状の開発に取り組んだ。①噛み合い進行方向にできるだけ長く相手歯車との歯当り接触を保つ事ができる。②走行中の幅広いトルク変動でも噛み合いの起振力の変動が少ない。③走行中に歯車装置の変位が発生しても、極端な歯面の片当りを防止できる。この様な特徴を持つ歯面修整として、三次元的な滑らかな歯面修整を施した歯車を開発する事により、現状の寸法形状を維持しつつ、歯車装置の騒音を約10dB低減させる事に成功した。なお、この歯面修整を得るためには、高精度に歯車を仕上げる技術が不可欠である。
 本発明により、新幹線を始めとする高速鉄道や、在来線、地下鉄等幅広い鉄道分野への活用が可能となり、車内の静粛性向上や周辺環境の騒音低減に効果を得ている。


             



平成26年度大阪チャレンジ発明賞(敬称略)

 
「無電源サージカウンタ」 (特許第5499269号)
    廣 岡 征 紀(音羽電機工業株式会社)
    門 脇 大 敬(音羽電機工業株式会社)

(背景と課題)
 本発明は、落雷が起こった時に発生する雷サージ電流の流入出回数を計測するカウンタに関する技術である。
 耐雷対策の必要性把握や実施耐雷対策の効果確認では、カウンタを用いて雷サージ電流が流入出したかどうかの記録をさせている。ただ、従来のカウンタでは、カウンタ回路の駆動にAC100V電源や電池電源を用いていたが、電池電源を利用した場合であれば電池の交換作業が必要となるため、長期間の記録をさせる場合では保全作業が不可欠となっていた。
 現象の計測対象が雷サージ電流であるが、そのエネルギーをカウンタ駆動回路の電源として利用しようとしても、雷サージ電流が流れる時間は数μ秒程度と極めて短時間しか流れないため、この瞬間的な電流ではカウンタを直接駆動させることはできない。
 本発明は、電子回路を工夫して雷サージ電流のエネルギーで流入出サージ電流の回数を無電源で測ることができるようにしたものである。

本発明の特徴
 雷サージ電流の計測用カウンタにおいて、無電源化するために待ち受け状態では電気がいらない電磁カウンタを利用し、電子回路の工夫により極めて短時間しか流れない電流でカウンタを駆動させるようにしたことが本発明の最大の特徴である。また、電源線には直接接続せず、サージ電流検出箇所も電流検出コイルを介するので、サージやノイズに対して影響を受けない構成にしている。
 無電源で雷サージの計測ができることから、雷サージ電流が流入出しそうなところのどこでも、電源のことを考慮せずに設置でき、雷サージ発生の有無を記録できるようにした。落雷時においても不断の継続性を図らなければならない各種サービス業務や、官公庁設備、鉄道・道路事業等の事業で、雷サージ電流の有無把握のために高い評価を得て使用されている。






平成26年度大阪発明奨励賞(敬称略)

「多孔質複層中空糸を備えた濾過モジュール」 (特許第3851864号)
   森田  徹(住友電気工業株式会社)
   井田 清志(住友電気工業株式会社)
   船津  始(住友電工ファインポリマー株式会社)



(背景と課題)
 ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の中空糸ろ過膜は、高いろ過精度に加え、材料固有の優れた耐薬品性、耐熱性や、加工技術に起因する高い抗張力という特長を有する。しかし、従来のPTFE中空糸膜によるろ過は、微粒子が表面ではなく、内部で捕捉されていた。つまり捕捉された微粒子は、膜厚方向の深い部分まで入り込んでしまう。このため逆洗や散気等の物理的な洗浄を行っても、微粒子は、膜内から除去されず不可逆的な目詰まりを生じ、空孔率が徐々に減少して流量が落ちるという課題があった。

(本発明の特徴)
 本発明は、中空糸膜構造を従来の単層から、ろ過を行う外表面のろ過層と機械的に保持するための支持層の複層構造とし、微粒子の膜内部への侵入を許さない表面構造により微粒子の目詰まりを抑え、結果としてPTFE中空糸膜による汚濁水のろ過性能を飛躍的に改良したものである。具体的には、目詰まりを防ぐために、ろ過面となる外表面の空孔を支持層の空孔よりも小さくし、かつ、上記ろ過層の外表面の各空孔を囲む繊維状骨格の平均最大長さ(L)を、圧力0.1MPaで加圧したときの粒子捕捉率が90%以上の場合の捕捉粒子の粒径(X) (μm)で除した値をRFL値(Y)(Y=L/X)としたとき、このRFL値が下図の領域内に存在するように、上記Lが設定されている。





・「防災用品収納用椅子」 (意匠第1491088号)
   峰尾 欽士(YAMATO-NB株式会社)

(開発に至る思い)
 私たち日本人は、過去の大災害で多くの尊い命を失い、非常時に備えておかなくてはならないことは、とても良く分かっている。だが、わかってはいても、多くの備蓄品を置いておく場所を確保することは、日本の土地事情では難しい。災害から日にちが立てば、日々の生活を優先してしまい、備蓄がおろそかになってしまう。ならば、特別な備蓄場所を必要とせず、かつ、身近に置けるものを、と開発した。

(本発明の特徴)
①デザイン性と機能性
 非常時にすぐに使えるようにする為には、日常から手元に置いておくことが必要である。そのためにはデザイン性に優れていることが必要である。デザインを家具調にすることで、普段部屋に置いても違和感がなく、椅子として使用できるよう工夫した。また、様々なインテリアに馴染めるよう、天板はレザー調と畳の2種類を用意した。
 中には弊社商品の洋式トイレセットと非常用品などを入れることが出来る多機能な容器である、多機能防災缶「ゆうぺーる®」を収納できるように設計されている。中に必要に応じた備蓄品を入れておけば、常に身近に置いておくことができる。
②社会貢献、環境貢献
 日本三大檜のひとつ、紀州ヒノキを使い、国内で製造することにこだわった。
 国産材を使用し、国内で生産することで、日本の森林を守る。日本の国土は、全面積の約7割が森林。そして森林の約4割が、戦後を中心に植栽されたスギやヒノキ等の人工林で、間伐などの手入れが必要だ。10年後には伐採して利用すべき樹齢50年以上の人工林が6割にも達する見込みである。いま日本の森林資源は「育てる」から「使う」時代なのだ。また、国産材の利用が進むと、地域の林業生産や製材加工等の木材産業が活性化し、雇用も創出することができる。
 加えて、国産材を利用することは、生物の多様性に富んだ持続的な森林づくりに貢献する。木材需要の約7割を占める輸入材を国産材利用に置き換えていく消費行動が、直接的・間接的にも世界の森林の生物多様性の保全に結びついていると考える。




・「ムッシュマグニ(SL-64)」 (意匠第1473361号)
   高崎 充弘(株式会社エンジニア)
   安藤 雅則(株式会社エンジニア)
   川合 真之介(株式会社エンジニア)



(背景と課題)
 携帯用のルーペは小型軽量で持ちやすいハンディータイプが好まれて、多くのユーザーから支持されており、高齢化社会の進展に伴いユーザー数は更に増加傾向であります。しかしながら、携帯用ルーペには、拡大する機能を満足するだけで、色彩やデザインが今ひとつの製品も多く、携帯するのに愛着もわかないとの不満がありました。さらに、片手で持って使うタイプが多いので、ルーペで見たい対象物に対して両手が使えないなどの不自由さも課題となっていました。

(本発明の特徴)
 本発明は、変幻自在をコンセプトとする独創的な折りたたみ式ルーペです。
 使うことが楽しく愛着が湧き、人と共有したくなる生活や微小作業におけるパートナーになります。机に設置しハンズフリーで作業したり、強力な磁石が付いているので、工具に装着することで精密作業の効率を向上させます。また収納時は小さく折り畳み、開閉が心地よいフェルトケースの中で出番を待ちます。




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